各界のイノベーターのライフスタイルとともにI-PACEの魅力を紹介させていただく「JAGUAR I-PACE INNOVATORS’TALK」。これまで、さまざまな方々にご登場いただいたが、今回はその取材を担当させていただいた私、電気自動車雑誌Eマガジン編集長の隂山が、これまで15名の方に取材させていただいたエピソードとともに、I-PACEの魅力を紹介させていただこう。
『フォーミュラE』最終戦で見た
I-PACEレースカーの衝撃
I-PACEに初めて乗った(同乗させていただいた)のは、2018年の11月。浅間ヒルクライムのエキシビションで、当時はまだ日本に1台しかなかったデモカーをレーサーの福田良氏が走らせるという話を聞き、リアシートに同乗させていだたいたのが最初であった。チェッカーフラッグが振られるとともに、驚きのトルクでスタート。I-PACEはカーブを右に左に峠のクローズドコースをマックス170kmものスピードで下っていく。擬似エグゾーストノートのアクティブサウンドデザインが室内に響き、圧倒的に速い。サスペンションもノーマルのエアサスというが、クルマはビタっと安定してまるで不安がなく、ブレーキもズドンと効く。プロのレーシングドライバーの運転ということもあるだろうが、I-PACEとの出会いは衝撃的なものであった。福田さん自身もこんなにスポーツ性能が高いSUVはほかにないと話していたのを覚えている。
それから半年後の2019年夏、私はフォーミュラEの最終戦を取材しにNYのブルックリンを訪れた。フォーミュラEを見るのは初めてのことであったが、じつはI-PACEを使った前座レースである「e-TROPHY」のほうに興味があった。ちょうどイノベーターズトークの取材を始めた頃で、I-PACEのレースを自身の目で見たかったのだ。音もせず、排気ガスも出さないEVは、市街地でレースを開催することが可能である。フォーミュラEはローマ、パリなど世界の都市で開催されているが、レース当日はNYブルックリンの港町レッドフックに、巨大な仮設コースが出来上がっていた。
会場に近づくと、フォーミュラEのモーターが発する迫力の走行音が聞こえてくる。RCカーのモーター音が大きくなった走行音に近いのだが、e-TROPHYのレースはフェンス越しに見ても本当に静か。カーブのときにタイヤが鳴く音以外は音がしない無音のレースである。ただ、その予選で1台がクラッシュして横転。イエローフラッグが振られたかと思うと、クレーンで宙吊りにされたI-PACEが目の前からコースアウトしていった。EVスペシャリストの潮﨑さんを取材させていただいた際、I-PACEの安全評価は欧州基準であるユーロNCAPで5☆(=最高評価)だと語っていたが、その横転した車体はロールバーが入っているとはいえキャビン内は無傷。床のバッテリー部分も変形は見られず、I-PACEの衝突安全性の高さに驚いた瞬間であった。
e-TROPHYにはさまざまな国のチームが参加し、カラーリングもカラフルで楽しめるが、私がピットで気に入ったのはホワイトボディといえる真っ白なベースカー。ウイングとリップスポイラーだけ装着した白いI-PACEが、やけにカッコよく見えたのを覚えている。その日はパナソニック・ジャガー・レーシングのミッチ・エバンス選手が表彰台に上がり、e-TRORHYと合わせ電動化に対するジャガーの本気さを感じることができた。
Profile:隂山惣一
クルマ、鉄道、サーフィンなどコアな専門誌を手がける(株)ネコ・パブリッシングでGarage Life、BMW BIKESなどの編集に携わり、Daytonaの編集長に。所ジョージの世田谷ベース、FAMOSO、VINTAGE LIFE、HUNTなど、さまざなジャンルの創刊編集長やプロデュース、商品企画などを経て2018年に100%電気自動車雑誌Eマガジンを創刊。所有していた1966年式ニッサン・セドリックをEVにコンバート。YouTubeで取材模様や自身のEVライフを配信している。
長野日帰りも疲れ知らず
自宅充電はかなり便利
さて、このイノベーターズトークの取材を担当させていただいてから、I-PACEは10回以上お借りし、遠いところでは荻原健司さんを取材させていだたくために長野市内まで日帰り自走を果たしたこともある。私にとってI-PACEは何回借りてもまた乗りたくなり、この取材のために借りて乗るのが楽しい電気自動車だ。これまでのインタビューでも皆さまから「走っていて気持ちいい、楽しい」というコメントを数多くいただいたが、私自身もそう感じている。とくに、夏の夜、窓を全開にして空いた道を走ると、まるで無音の世界でグライダーに乗っているかのような感覚を味わうことができる。
EVというと航続距離が心配という方も多いが、I-PACEの航続距離は400km以上(季節や状況によって異なる)。都内から伊豆の伊東まで取材に行ったときは無充電で往復が可能であった。横浜〜長野往復時には行きに1回、帰りに3回、うち1回は休憩しながら1時間充電を挟んだが、基本は30分ずつ、SAで急速充電して、家路につくことができた。SAでランチをすれば30分はすぐに時間が経過するし、EVでの遠出は充電時間中のお茶やお土産探しも楽しみのうち。アダプティブクルーズコントロールを使えば高速道路はほぼクルマ任せで、日帰り長野出張も疲れをあまり感じない。個人的にI-PACEの航続距離438km(WLTCモード)は充分、今では遠出にさほどストレスを感じることはない。しかも、I-PACEは他社のEVに比べて、バッテリー容量の表示が正確だと感じる。他社のEVでは稀に電池の表示残量と可能走行距離に乖離があり、あれよあれよと残量が減り、焦ることが多々あるのだ
また、取材でI-PACEを借りるときには自宅駐車スペースで充電するのだが、I-PACEはサイズが大き過ぎずにちょうどいい。私の家のような古い住宅地の駐車場では、I-PACEより大きいクルマだと入らないという家も多いことだろうし、立体駐車場にも苦労する。I-PACEは裏道でもさほど不便さを感じさせないサイズが大きなアドバンテージだ。自宅の充電コンセントで夜からチャージすれば、朝には航続距離にして120km分くらいは回復しているのでガソリンスタンドいらずで便利である。
以前、ピーター・ライオンさんにインタビューさせていただいたとき「ジャガーは女性に人気なんです」と語っていたことが印象的だったが、クルマに興味のない私の奥さんがI-PACEを借りてきたときに「なんてキレイなクルマなの? どうしたら家のクルマになるの?」と珍しく食いついてきたこともあり、まさにそういうことなのだなと実感したのを覚えている。どうしたら家のクルマになるかは、購入すればいいという簡単な答えなのだが!(笑)
じつはヴィンテージ好きに刺さる?
I-PACEのデザインとディテール
この企画の当初、WCOTYの選考委員の方々にインタビューさせていただいたが、I-PACEは同賞のデザインアワードも受賞。デザイナーは名デザイナーのイアン・カラム氏で、I-PACEは彼がジャガーにおいてデザインした最後のクルマとなった。僕もこのエレガントでスポーティかつ近未来的なスタイリングが大好きである。もともとEマガジンを制作する前までは新車というよりは古いクルマにバイク、古い時計にカメラなどが大好きだったが、I-PACEのデザインは室内外含めて、そんなヴィンテージ好きの琴線にふれるデザインが細部にまで宿っているような気がする。世界中にいるジャガーファンの皆様は、骨董を愛する本物の目利きの方も数多くいらっしゃることだろう。
I-PACEはそんな方々からも愛されるエッセンスが盛り込まれているのではないだろうか。それは最新のプロダクトながら創業100年近くもの歴史を持つブランドだからこそ成せる技なのかもしれない。
EVでもジャガーを感じる。それはジャガーに乗り続けている方ならば直感的にわかるのだろう。取材させていただいたXJSオーナーの秋田さんは、まさにそう語っていた。私でいうと自分と同い年のM型ライカを愛用していたことがあるが、それがデジタルになっても撮影した写真、操作感や質感はまさにライカ以外のなにものでもなかった。フィルムがデータになってもライカはライカなように、エンジンがモーターになってもジャガーはもちろんジャガー。そのブランドと世界観は生き続け、新しいプロダクトをいつも期待しているファンを魅きつけるのだろう。I-PACEは最新のEVなので、テック好きな方が購入するクルマでは? という考え方もあるが、逆に僕のような食わず嫌いのヴィンテージおじさんが、試乗をきっかけにコロっとI-PACEに仕留められる可能性も高いのでは? と、実体験からそう感じている。
さて、ある日イノベーターズトークでの取材後に、横浜で贔屓にしているとある商店街で買い物をすることがあった。そのときに、意外にもフロントトランクが役に立つ。私は刺身に目がなく、旬の魚をまるのまま買うことが多いのだが、それを入れるのに実はピッタリなのである。魚は会計時にビニールに入れていただくものの、水分や生臭さが気になり、車内に置くのはたとえ床でも気が引ける。SUVだとカーゴスペースも室内同様の温度なので魚が暖まってしまいそうだ。しかしフロントのトランクはEVなのでボンネット内に熱がこもらず冬は冷たいままだ。このスペースは魚のほかケーキを入れるにも役に立つし、リモコンで解錠するので出し入れも楽で気に入っている。
乗ってみればわかる
走りだけでない機能
去年の11月にはI-PACEをクラシックカーのイベント「カーマガジン・ウィークエンド」のデモカーとして大磯ロングビーチに持っていったこともあった。そこでは読者の皆様への同乗試乗会を行い、軽いジムカーナコースをレース経験者が読者を乗せて走るという催しを開催したのだが、I-PACEを体感したみなさんが同乗から帰ってくると、一同目をまるくし「すんごい速い!」「ジェットコースターみたい!」「EVを見直した!」と興奮気味に語っていたのを思い出す。こうしたスピード面のアドバンテージは、高速道路での合流などで本当に力を発揮する。
自動車評論家の方は、クルマのオーディオについてコメントをされることがあまりないが、私はクルマに乗るとまずボリュームを上げて音楽やお気に入りのラジオ曲を聴くことが多いため、スピーカーやオーディオは重要なポイントとなる。HIP HOPを重低音で鳴らし、ラフな格好で高速道路をクルーズするのにピッタリで、それが楽しい、他社のEVもあるが、I-PACEはAORやジャズ、女性ボーカル系がハマり音をキレイに響かせる。英国を代表するオーディオブランド、メリディアンのシステムがそういうセッティングなのかもしれない。そうした音楽だとドライブする姿勢も自然とよくなりっている気がする。また、音楽も地図もApple CarPlayで自分のiPhoneとコネクトできるのでとても便利。I-PACEに乗るときはいつもスマホと連動させており、スマホの充電もできてまさに一石二鳥だ。
I-PACEの取材の思い出はまだまだあるが、とにかくみなさんも一度I-PACEに乗って、アクセルを踏んでみることをお勧めしたい。私のようなヴィンテージおじさんも、きっとこのEVが好きになってしまうはずだ。