2019年11月15日(金)、虎ノ門ヒルズで「Mobility Transformation 2019 〜移動の進化への挑戦〜」が開催され、ジャガー・ランドローバー・ジャパンはプレミアムスポンサーとしてイベントをサポートした。主催は「INNOVATORS’ TALK」でも紹介させていだたいた北川烈代表が率いる株式会社スマートドライブ。「これからの移動はどのように進化していくのか」をテーマに、その具体的内容を国内外の企業のトップランナー、およそ30名以上のトークから知ることができた。
当日は様々な業界から1,800名もの人々がセッションに参加。有料イベントで初開催にもかかわらず問い合わせが多数あり、申し込みを打ち切るほど盛況であったが、ここではそんな当日の様子をレポートしていく。セッションは20以上開催され、ここで紹介するのはごく一部になるが、まさに今が、移動の進化における変革期真っ只中であるということを、是非体感いただきたい。
垣根を超えたコラボレーションで
グローバルで勝てるサービスを
「Mobility Transformation 2019」、最初の登壇はスマートドライブ北川代表の基調講演。このカンファレンスを主催した目的や、現在のスマートドライブの事業内容についてのトークセッションでスタートした。
「100年に一度の大転換期といえるモビリティ領域ですが、100年前というと、電話もタクシーもない時代。今後の30〜40年で、同じくらいの移動の変化が起こると考えます。クルマの形や性能が変わるだけでなく、人々も変化してコミュニケーションの仕方、生活そのものが変わっていくでしょう。その中で重要なのは『日常的な移動の効率化』により『新しい出会いや消費を生み出していく』時代がやってくるということ。最近ではCASEとかMaaSなど効率の話は出てくるが、効率化されたあとにどのような日常が待っているか、にはまだ触れられていません」
北川代表によると、現在日々の移動自体は効率化されてきているが、人類が1日に費やす移動の時間は、数千年前から変わっていないという。紀元前なら狩りに出掛ける時間、現在は通勤通学に費やす時間など、その目的は変わっているが、その時間は変わらず約2時間ということだ。この2時間が効率化されて短くなっていくわけだが、そもそも効率化によって人が動かない社会が到来することは、人類にとって良いことなのであろうか?
「人々が動くというのは根源的な欲求であり、移動した先で新しいものを生み出すことによって、人類は進化してきました。効率化したあとの時間をどう使うのか。あえて、まったく効率的ではない移動を生み出すことで価値を生み出すということは、忘れがちですが大事な視点だと考えています」
スマートドライブは、移動の効率化と新しい移動を生み出す世界を実現するにあたり、近年様々な企業とのコラボレーションを果たしている。
「移動の進化はひとつの会社で完結できるようなものではありません。自動車メーカーはもちろん、通信、保険、不動産、都市設計、住データなどさまざまな分野に関わる新しい企業が、モビリティサービス領域に参入し、展開しています。ただ、こうした企業の視点や事例などを業界の垣根を取り払って会話していく機会がないと思い、さまざまな業種の方々のビジョンを共有する場として『Mobility Transformation 2019』を企画しました」
北川代表によると、ビジネスではとかく競合やカニバリを気にしがちだが、マーケットが広がるときには競争相手とも協業できる可能性があり、垣根を超えたコラボレーションと共創がキーワードになるとのこと。外に目を向けると、グローバルではライドシェアなどのプラットフォームを検討している段階だが、国内の同業他社と一緒に共創すれば、グローバルで勝てる。こうしたカンファレンスで「移動の進化を加速させたい」と語っていた。
JAGUARが見据える
フューチャーモビリティとは
次に登壇したのは、ジャガー・ランドローバー・ジャパン代表取締役社長のマグナス・ハンソンと、経営戦略コンサルティング会社である株式会社ローランド・ベルガー 自動車グループリーダーシップメンバーであるパートナー・貝瀬斉氏。マグナス社長のJAGUARが見据えるフューチャーモビリティへの取り組みについてのセッションがスタートした。
「今は、これまでになく自動車産業の進化のスピードが速い時代であると同時に、破壊的な時代でもあります。弊社ジャガー・ランドローバーも、急速な技術開発、地球温暖化に対する環境規制、クルマの安全性、メガトレンドとなっている社会におけるあり方など、複雑な課題の真っ只中にあり、よりよいものを欲するお客様に向けての製品や解決策を、常に模索しています。
弊社が急速に進めているのは自動運転(Automated)、コネクテッド(Connected)、電動化(Electric)、シェア(Shared vehicles)といった4つのカテゴリーで、その頭文字をとって『ACES』としています。自動運転については、Google同様Alphabet傘下のWaymoとパートナーシップを締結し、ハイレベルなテスト車を試験中です。電動化についてはジャガー初のEVである『I-PACE』が世界各国のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
また会社全体のビジョンとしては『Destination Zero』を打ち出しており、持続可能な社会を作るにあたって、『排出ゼロ』『事故ゼロ』『渋滞ゼロ』の社会を実現していきたいと考えています。排出ゼロに関してはパワートレインの電動化と素材革新による排出量削減。事故ゼロは非常に複雑な技術だがセンサーやカメラによるモニタリングで、事故ゼロに貢献。渋滞ゼロについては、自動車メーカーの専門知識を活かして、さらなる自動運転化を進めていく考えです」
テクノロジーが進んで自動運転が実用化されると、車両の進化だけでなく法の適正化の必要があるなど、移動の進化には課題もいろいろあるが、「移動の進化を加速させる」ためにマグナス社長が一番必要と考えるのは、「未来に対する計画」だという。
「ジャガー・ランドローバーブランドのDNAや価値は普遍的ですが、モビリティのシステムや権利、法律など、関連するものは将来変化していきます。なので、大事なのは『未来に対する計画』であり、具体的には『テクノロジーの進化』と『個々のニーズへの応え方』つまりドライバーの時間の使い方と同乗者の快適性への回答が、重要なのではないかと考えています。その中でブランドの価値がテクノロジーの進化にあたって重要な要素となるため、コンセプトを描くための将来の戦略が重要になってきます。今後、社会がどのようになるのか多くの仮説を立てながら、テクノロジー&コンフォートとエレガンスを、2つのブランドで実現していきます」
マグナス社長のトークに対し、ローランド・ベルガーの貝瀬氏は、「エアラインでも、LCCもあればファーストクラスを用意している会社もある。東京からNYまで行くなど目的地が同じでも、選べる選択肢が多用になっているため、ジャガー・ランドローバーがどんなユニークな価値を提供していくことがポイントになっていく」と語り、さらにこう続けていた。
「ジャガーがJapanTaxiとコラボしてI-PACEのタクシーが実現した、なんという事例は面白い試みですよね。ラグジュアリーブランドが合理的な移動手段であるタクシーとコラボするとどうなるか? ゆっくりリアシートでお客様として座っているのもよいですが、乗り味が気になって自分で運転してみたくなったとき、移動も兼ねて試乗に行くきっかけになります。こうした、いろいろな新しい取り組みを打ち続けて、タッチポイントを増やすことが重要だと思います」
JAGUAR I-PACE AWARDに
輝いたのは、スマートパーキング
今回の「Mobility Transformation 2019」の中で、さまざまなベンチャーが、ライトニングトーク(5分間のプレゼンテーション)で未来の移動に関する自社製品の発表を行ったが見事「JAGUAR I-PACE AWARD」に輝いたのは「スマートパーキング」を運営する「株式会社シード」。この「スマートパーキング」とは、空いたスペースにIoT端末を搭載したカラーコーンを置くだけで、駐車場管理、コインパーキング運営ができるシステムのこと。空いている駐車場を持ったオーナーとその場所を使いたいドライバーをマッチングさせるアプリで、入庫と出庫がスマホのボタンひとつという簡単なアイデアで、現在名古屋を中心に2,000箇所のパーキングスペースを持つという。従来、コインパーキングを個人オーナーがスタートする場合は、初期費用は370万円程度かかっていたそうだが、スマートパーキングはゼロ円。売り上げは成果報酬型で折半し、駐車スペースも1台から可能ということ。授賞式は懇親会の中で行われ、賞品はI-PACE長期貸出権利ということ。見事受賞した株式会社シードの吉川幸孝社長は受賞の感想をこう語っていた。
「このイベントに未来を感じるとともに、モビリティの未来について考えている方がこんなにいらっしゃることに驚いています。実はジャガーのスタイルングが好きで、『F-PACE』を購入しようと試乗にも行ったことがあり、まさかの受賞にさらに驚きました。ほかにも素晴らしいベンチャーがたくさんあったので、その中から選んでいただけたのは本当にうれしいです」
懇親会においてマグナス社長は、「ハード、ソフト、コネクティビティで、今までにないものすごいスピードで転換期が訪れていることを実感できる、素晴らしいイベントだった。モビリティは今後さらに安全性が高まり、社会、経済も変わっていく。私たちはとても面白い時代にいるが、誠実かつ謙虚に、より大きなイメージを描いて、排出ゼロ、事故ゼロ、渋滞ゼロの世界を目指していかなければならない。大企業、中小企業、老舗企業、ベンチャー企業、そしてハードウェア、ソフトウェアの垣根を超え、知識を結集し、未来を作り上げていこう」と締めくくった。なお、カンファレンスの途中では人類至上最速のスプリンター、ウサイン・ボルト氏が自らの名を冠したボルト・モビリティを引っさげて登場するというサプライズも。大盛況のうちに終わった「Mobility Transformation 2019」。来年、第2回があればぜひ、みなさまにも参加していただきたい。