掲載内容は予告無く変更する場合がございます。

表示価格は、消費税10%を含むメーカー希望小売価格に基づく概算値です。実際の価格は正規リテイラーが独自に定めています。詳しくは、お近くの正規リテイラーにお問い合わせください。

【JAGUARモデルの新規生産に関して】

I-PACE、 F-PACE、 E-PACE、XF、F-TYPEは、新規生産受付を終了いたしました。在庫車両については、お近くの正規リテイラーにお問い合わせください。

【生産制限・供給制限に関して】

直近の部品調達による生産・供給制限に関しまして、本ウェブサイト内のコンフィギュレーターで選択可能となっている一部の標準装備が変更、オプション装備がオーダー受付不可となっている場合があります。オーダー受付可否については、正規リテイラーにお問い合わせください。

【経済変動加算額について】‎

当社は、長引く円安の影響により、将来の英ポンドと日本円の為替レートの変動を予測した希望小売価格を設定することが困難な状況となりました。このような厳しい状況に対処するため、2023年8月よりサーチャージ(以下、「経済変動加算額」といいます)を導入しました。‎‎

当面の間、経済変動加算額は160,000円(消費税別)とさせていただきますが、為替レート等の経済情勢に応じて変更します。 適用される経済変動加算額は随時公表され、正規リテイラーが発行する見積書または注文書に記載されます。 仮に購入予定車種の車両本体基準価を‎8,800,000円(消費税別)とした場合、見積書または注文書には、以下のように車両本体価格が表示されます:

車両本体基準価格(税込)‎  ‎8,800,000円
経済変動加算額(税込)‎  ‎    176,000円
車両本体価格(税込)‎  ‎        8,976,000円
‎(表示の例‎)

ご理解をいただけますと大変幸甚に存じますと共に、ジャガー・ランドローバーへのご愛顧に感謝申し上げます。

経済変動加算額について詳しくは、こちらのページをご覧ください。

  


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車両本体基準価格(税込)‎  ‎8,800,000円
経済変動加算額(税込)‎  ‎    176,000円
車両本体価格(税込)‎  ‎        8,976,000円
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稀に見るほどの高評価で世界中を沸かせている

いよいよ電動車の普及が本格化していくなかで、欧州プレミアム・ブランド勢もこぞってBEV(バッテリーEV)を開発し、リリースへの準備を進めている。その先陣を切ったのが英国のジャガーだったのは少し意外だった。ジャガーといえばドライビング・パフォーマンスと美しくエレガンスなデザインをコアとするスポーツカー・ブランド。それをBEVで貫き通すのは簡単なことではないだろうと思えていたからだ。英国の伝統的なクラフトマンシップを背景としたブランドと最新の環境対応車がイメージとしてにわかには結びつかないという面もある。

I-PACE(アイ・ペイス)はエレクトリック・パフォーマンスSUVと銘打って登場した。90kWhと大容量のリチウムイオン・バッテリーを搭載してBEVの課題である航続距離には400km以上という十分な性能で応えつつ、最高出力400PS、最大トルク696NmのAWDとすることで0-100km/h加速4.8秒の俊足を誇る。BEVであるためパワートレーンはほとんど無音だが、エンジン車のエキゾーストノートを模したアクティブ・サウンド・デザインというギミックも用意されている。

美しさについてもショートノーズでキャブフォワードとなる新しい境地を切り開いた。かくしてI-PACEは2019ワールド・カー・アワードで史上初の三冠達成という快挙を始め、すでに62もの自動車賞を受賞している。稀に見るほどの高評価で世界中を沸かせているI-PACEにいよいよ日本で試乗。どこにその魅力があるのだろうか。

Masamichi Ishii sitting in his I-Pace

Profile:石井昌道

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、車の楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Jaguar I-Pace driving on road

ジャガーならではの走りのキャラクターに魅了される

細かい説明は後にして、まずは走りからレポートしよう。低回転から大トルクを発生する電気モーターの走りは、静かで力強いメリットを持ちつつも、エンジン車に比べるとメーカー間の差を出しづらく、どうやって走りのキャラクターを持たせるのかが課題と言われてきたが、I-PACEはしっかりとした回答を持っていた。アクセルを無造作に踏み込めば、それこそのけぞるぐらいに速いのだが、右足の動きに対しての加速感が驚くほどリニアに仕上がっているのだ。

過去にコンバートEV(エンジン車を改造した手作り)を含め、様々なBEVに乗ってきたが、電気モーターの特性をリアルに出してしまうと、レスポンスが良すぎて人間の感覚を追い抜いた加速感になってしまうことがあり、何やら違和感を持つことにもなる。ところがI-PACEは感性に忠実にトルクを提供してくるので、速いけれどこの上なく気持ちいい。

また、低回転・大トルク型は高速域で頭打ち感が出やすくなる要因でもあるが、100km/hを超えてもなお加速の衰えをみせず伸びやか。まるで良くできたエンジンを搭載したジャガーの名車のように、頼もしいけれど気品に溢れ、加速感そのものでドライバーを魅了するのだ。BEVでここまで加速が楽しめ、なおかつ独自の走りのキャラクターを実現しているモデルは他にない。

件のアクティブ・サウンド・デザインは3段階の調整式でもっとも派手なDynamicでは急加速時にスポーツエンジンのようなサウンドが室内に響き渡った。正直に申せば、人工的な音であるのはわかるし、個人的にはあまりギミックが好きではないのだが、元気にワインディングを走らせているときは案外と心地いいものだった。耳から加速感や速度感を得ることも、ドライビング・プレジャーにとっては大切なものだということを認識した

ワインディングでの走りも圧巻、高い完成度に驚いた

ワインディングでのハンドリングも圧巻だった。バッテリーをフロアに配置したことによって前後重量配分は50:50で低重心(対F-PACEで130mm下がっている)。そしてボディのねじり剛性はジャガー史上最強の36kNm/degを誇るから資質的にもハンドリングマシーンと言えるのだが、パワートレーン同様に感性性能にも優れていた。

コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと非常に少ないロールで安定した姿勢のままシャープにインへノーズが向いていく。ピッチングも少ないのだが、わずかにフロントが沈み込んでいくことで、フロントタイヤが路面をしっかり掴んでいく感覚となって走りやすく、動きが素直に感じられる。路面の凹凸やアンジュレーションに対する足さばきも見事で最小限の接地変化でワインディングを駆け抜けていく。ペースをあげていっても前後バランスが絶妙で、気持ち良く曲がりながら安定感も抜群。

トルクベクタリングバイブレーキも搭載されているが、それのお世話になっている感覚はほとんどなく、基本的なシャシー性能の高さをうかがわせる。

まったく新しい電動車専用プラットフォームで、最初からいきなり完成度が高いのは驚きだ。デジタルシミュレーションによる実車以前の開発を入念に行ったうえで、ニュルブルクリンクでの厳しい走り込みなどを含めて徹底的な実走行テストを敢行してきたからこそだろう。古くからジャガーのシャシー性能には定評があったが、現在でも世界の最先端にいるのだ。

Masamichi Ishii getting into his I-Pace

空力性能を追求した新しい時代の美しいスタイル

国内外の様々な自動車メーカーでカーデザイナーに取材をするとき「個人的にあなたが好きなクルマはなんですか?」という質問をすることにしている。自身が担当しているブランドではないものを選択してもらうようにしているのだが、かえってくる答えにジャガーがあげられる確率は非常に高い。半数以上の人が迷いなくジャガーの名を口にし、そのフォルムの美しさを褒め称えるのだ。

ジャガーのフォルムはロングノーズ・ショートデッキと呼ばれるものが多く、普遍的な美しさであるともされてきた。その長いノーズは大型の高性能エンジンが収まっていることの象徴であり、短いリアデッキと小さく見えるキャビン(室内空間)は俊敏性や贅沢さを表している。ところがI-PACEはBEVだからもちろんエンジンは存在せず、もっともスペースを必要とするユニットであるリチウムイオン・バッテリーはフロアに敷き詰められているからロングノーズは無用。必然的にキャビンが前進したスタイルとなった。ジャガー伝統のロングノーズ・ショートデッキとは真逆となったのだが、美しさは健在でしかも完成度が高い。

何かに似ていると思ったのだが、ボディ上部のデザインは2010年に発表されたコンセプトカーのジャガーC-X75に近いのだ。電動車のスーパースポーツであるC-X75はハイブリッドパワートレーンをミドに搭載するためショートノーズ。考えてみればミドシップのスポーツカーやレーシングカーに共通するスタイルであり、キャビンは前進するものの空力特性を考慮すればフロントウインドーは寝かされて、それが美しさに繋がっていく。

航続距離が課題となるBEVであり、なおかつ前面投影面積が大きくなるSUVのI-PACEはスーパースポーツやレーシングカーに勝るとも劣らない必然性で空力性能を追求しているため、ノーズからルーフにかけて強い傾斜が連続し、テールエンドまで美しいカーブを描くこととなった。エンジン車と同じようなフロントグリルが存在するが、ここから取り入れた空気はボンネット・スクープから抜けてルーフを通ってテールのウイングまで導かれていく。

エンジン車のように排気管等がないBEVなので理想的なフラットフロアとなり、後端での空気の剥離をスムーズに促すリアディフューザーも高い効果を得られている。走行中に格納されるフラッシュドアハンドルも空気抵抗を下げるのが狙い。Cd値はSUVでトップクラスの0.29となった。かつてのロングノーズは高性能エンジン搭載を象徴したある意味での機能美だったが、I-PACEもエンジンレスのBEVであることと空力性能を追求したカタチ。新しい時代の美しさを獲得したのだ。

I-Pace interior

未来的ながら室内にはクラフトマンシップの暖かみも

ミドシップのようにキャブフォワードになったが、後方にパワートレーンがあるはずもないため、5シーターのキャビンは広くとられている。室内長が長くとれているので後席レッグルームやニールームに余裕があり、同クラスSUVと同等以上だ。インテリアは10インチと5インチのタッチ画面で構成される最新のインフォテインメントシステムなどデジタライズが進んでいるが、BEVだからといって未来的にクールに仕上げるだけではなく、シートのステッチをはじめ随所にクラフトマンシップの暖かみが感じられるのがジャガーらしいところだろう。

シートに腰掛けてみれば、その洗練された空間にまずはうっとりとさせられるが、「運転しやすそうだな」ということにも気付く。全幅が1895mmもあるが、ショートノーズなので車両感覚が把握しやすく、適度に高めのアイポイントで視界もいいのだ。とくに、サイドミラーがAピラーと離されドアに付けられていることで左右の確認がしやすい。歩行者や自転車の多い日本の都市部での右左折時などに役立つだろう。

今回試乗したのは20インチ・タイヤを履きエアサスペションが装着されたHSEだったが、街中での乗り心地はタイヤの大きさや硬さを意識させることがなくて快適だった。ただ単にソフトタッチというわけではなく、路面の凹凸から受ける衝撃を素早く収縮させるので無駄にボディが動くことがなくて快適に感じさせる。高速道路ではロングホイールベースのメリットが生きる。ピッチングが少なく、動きがユッタリとしているので大型クルーザーのように落ち着いているのだ。

BEVを始め、FCV(燃料電池車)やシリーズハイブリッドなど電気モーター駆動の特徴は、静かで力強いこと。電気モーターはゼロ回転から最大トルクを発生するのがエンジンに対して最大のメリットでもある。そのためI-PACEも車両重量の重さをまったく意識させずに軽快に速度をあげていった。

電気モーター駆動のもう一つの持ち味は、エンジンブレーキに相当する回生ブレーキを人為的に作り出せることで、I-PACEは強弱を設定できる。弱い設定ではエンジン車から乗り換えても違和感のない自然な感覚。強くすれば最大で0.2G程度のそれなりに強い減速度が得られるので、アクセルとブレーキの踏み替え頻度が大幅に下がる、いわゆるワンペダルドライブができるようになる。好みは分かれるだろうが、強い回生でのドライビングにはBEVならではの楽しさがある。右足の微妙な動かし方で完璧に加減速をコントロールするのが快感になっていくからだ。また、減速エネルギーを効率良く回生することが可能になるので電費を改善する効果も高い。

ジャガーは2020年以降に発売するモデルにBEVまたはハイブリッドの電動車を設定する方針を打ち出しているが、そのトップバッターとなったI-PACEは明確に方向性を示してくれた。電動車となろうともドライビング・パフォーマンスと美しいデザインはあいかわらずブランドのコアだということだ。それが実現できなければジャガーらしいBEVおよび電動車の戦略を進めることはできないとばかりに真剣に取り組んできたのだろう。だからこそ、I-PACEはじっくりと作り込まれるとともに、早くからフォーミュラEに参戦し、BEVによる世界初の国際レース、I-PACE eTROPHY選手権を立ち上げるなどモータースポーツでも積極的に下地を作ってきたわけだ。

今後はプレミアム・ブランドから続々とフォロワーが現れる見込みだが、それらに対してI-PACEはかなり高いハードルを築いた。とくに走りのキャラクターの造り込みは見事で、これを超えるのは容易ではないように思えるのだ。

レポート:石井 昌道 / 写真:菊池 貴之

 

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