都心に住み、クリニック院長として多忙な毎日を過ごす田中さん。現在お住まいのマンションとクリニックとの往復などや奥様日常の足として、数か月前からI-PACEが活躍している。日本での納車も始まったI-PACEだが、注文する方の職業として一番多いのは医師ということ。ジャガー初の電気自動車は、実際、医師の日常とどのようにフィットしているのか、田中さんのリアルEVライフに迫ってみよう。
「I-PACEは、納車から3か月ちょっと経ちました。現在所有しているクルマは2台でI-PACEとGW前に納車されたBMW ・Z4です。これまでいろいろなクルマに乗ってきましたが、ジャガーはI-PACEがはじめてのクルマです。速いクルマが好きなので、今までもスポーティーさを打ち出しているところはいいな、と感じていました」
「これまでの車歴ですが、最初のクルマはトヨタ・ソアラで次にBMWの5シリーズ、ホンダ・NSX、ポルシェ・911カレラ、メルセデスベンツ・SL600からもう一度NSXに乗りまして、メルセデスベンツ・SL55 AMG、BMW・640、フェラーリ・カリフォルニア、アウディ・S3、最近ではランドローバー・イヴォークを2台乗り続けました」
数々のハイパフォーマンスカーを乗り継ぎ、東京有明にある「ジャガー・ランドローバー東京ベイ有明」でイヴォークを購入したことからジャガー・ランドローバーの良さに気が付いたという田中さん。中でもイヴォークはお気に入りで車検のタイミングで違う色にも乗り換えたほどということだが、電気自動車であるI-PACEに乗り換えたきっかけとは何だったのであろう。
Profile:田中 宏明(I-PACEオーナー)
産婦人科医師。医学博士。京都府京都市生まれ。大学病院や関連医療機関で約25年にわたり周産期および不妊生殖医療を中心とした診療および研究に携わる。その間、約1年間、沖縄県に移住して日本最南端の病院で離島医療にも携わった。
クルマ好き医師が一目惚れしたI-PACEのデザインとカラー
「I-PACEにしたきっかけは『とにかくEVに乗ってみたかった』ことですね。クルマ好きなので、いろいろな雑誌等で『EVの電気モーターの加速はすごい』と見るにつけ、とても気になっていたんです。で、実際に検討を始めるとテスラがやはり目につくんですよね。でも、どうしても僕はのっぺりとしたデザインが好きではなくて。購入するには至りませんでした。クルマの魅力の多くは、私の場合はデザインなんですよね」
「そんな中、ジャガーがEVを出すという情報を得たんです。そしたら形がカッコイイし、まさにひと目惚れでした。ジャガーが造るEVであれば間違いないだろうということで、I-PACEのファーストエディションをすぐに発注しました。今までもそうですが、クルマはメーカーとスペックを見て、外見と色が気に入れば、とくに試乗せずに購入します。ただ、外見が気に入っても、気に入った色がなければ買わないくらい、色にはこだわります。このフォトンレッドはI-PACEのファーストエディション限定の専用色だったので、即決でしたね」
赤が元々好きだという田中さん。購入されたI-PACEはファーストエディション専用色だ。通常モデルにも赤はあるものの、以前乗っていたイヴォークと同じ色だったので、迷わずファーストエディションに決めたという。実際、このオレンジっぽい華やかかつ落ち着いた色合いは、田中さんの雰囲気にとてもよく似合っている。
どうしても欲しかったI-PACE
そのパワーと気持ちよさに感動
「充電に関して多少は気にしていましたが、BMWと2台体制で乗っていますし、むしろ『気にしていたら買えないな』と思いました(笑)。買う前に一応最低限のことは調べましたよ、急速充電スポットがどこにあるのか、とか。ただ『まぁなんとかなるかな』と。それよりも欲しい気持ちが強くて。どうしてもI-PACEが欲しかったんです」
電気自動車を購入するとき気になるのが充電と航続距離。そこは2台体制でもう一台がガソリン車であれば、購入のハードルは極めて低くなるようだ。そしてついにI-PACEが納車されることとなる。
「自分のI-PACEが、はじめて運転したEVなのですが『これがモーターなのか!』という気持ちよさがありましたね。内燃機関のクルマとは異なるフィーリングというか、パワーの落ち込みもありませんし、スーッと踏んだだけ前に進むという感覚っていうのがすごく気持ちいい。あとはとにかく加速! これは抜群にいいですね。私は基本的に速いクルマが好きなんですが、I-PACEはそういう方でも楽しめるほどスポーツ性が高いです。そして『さすがジャガー』という足回りや内装、エアサスの乗り心地などのトータルバランスがよくできていて、一方で日常使いもできる利便性の高さが同居するクルマだと思います。正直、イヴォークとはまた違った面白さを日々感じています」
今まで様々なクルマを乗り継いできた田中さん。走りや乗り心地、ラグジュアリー性から日常性などで、I-PACEはこれまでのどのクルマをも凌駕するパフォーマンスを見せているようだ。
急速充電中はゆとりの時間
毎日使いでも充電は10日に1回
「マンションなので自宅での充電はできないんですが、妻と買い物に出た際や子どもの習い事の送迎待ち時間に、充電することが多いです。区営駐車場など公営のところだと充電が無料の場合もありまして、私の場合は10日に1回くらいの充電で済んでいます。急速充電の日本の規格『CHAdeMO』の名前どおり、『ちょっとお茶でも』する間にできてしまうのでいいですよね。I-PACEが来てからは充電中に30分とか1時間、何もしないで周辺を散策するようになりました。ゆとりの時間ですね。いまのところ、全然イヤじゃないです、ただ、常に電欠は気にしていますね。ガソリンの場合は『残50km』となっても、ギリギリなんとかなるなと経験値でわかるんですけど、EVの場合は『残80km(目盛り1/4程度)』を切ってくると、正直不安になります (笑)」
バッテリー容量が90kWhで航続距離が438km(国土交通省審査値)と、満充電でかなり長い距離を走ることができるI-PACE。都内での普段使いであれば、家で毎日充電せずとも、田中さんの場合は10日に一回の急速充電で済むという事実はI-PACE購入を考えている方にとっては有益な情報であろう。また、まだ80km近く走るとはいえ、残量が1/4になると不安になるというのは、車種にもよるがEVオーナーの方々の感想として多いようだ。
「仕事に行くときもクルマなんですが、I-PACEは妻も使っているので、I-PACEで行くのは半分くらいですかね。妻はイヴォークが気に入ってよく乗っていたので、I-PACEに買い替えると決めたときに『何で買い替えるの』と少し不満そうでした。ただ、実際I-PACEに乗ってみると『今までのエンジンのクルマと操作感は全然変わらないのね』と気に入ってくれました。それまでEVは特別なもので、運転できないのではないかという不安があったようですが、すぐに払拭されたようです」
夫婦と3人のお子様での旅行にもファミリーカーはEVがベスト
奥様とともにいち早くEVライフにシフトした田中さん。実際I-PACEと毎日を過ごしてみて、今後のクルマ社会はどうなると感じているのであろうか?
「I-PACEが来たことで、私の今後のカーライフは劇的に変わると思います。少なくともファミリーカーは内燃機関のクルマに戻ることはないでしょう。ましてや8年後にはイギリスやドイツ、フランスでは内燃機関のクルマが販売できなくなるという、まさにEV時代が到来します。それに合わせて、時代の流れに取り残されないようにしないと、と思います」
「EVは、特にSUV系でラインナップが増えて世の中への影響力を見せていくと思いますよ。たとえば、I-PACEはセンタートンネルの出っ張りがないので、室内空間が広くとれて優位ですよね。実はイヴォークからI-PACEに買い換えたのも、3人の子供が成長するにつれ、手狭に感じるようになったからなんです。I-PACEに乗って、家族で房総半島のほうに旅行に出かけたこともあるのですが、夫婦+3人の子供たち分の荷物を積んでも、使い勝手の悪さを感じません」
週末に首都圏近郊にご家族で旅行に行くこともあるという田中さん。5名のフル乗車でもEV専用設計で、キャブフォワードデザインを採用しているI-PACEなら、室内も広く、ラゲッジスペースも同サイズのSUVと比べて余裕がある。
I-PACE自体がWi-Fiスポットに!
回生ブレーキの調整も楽しみのひとつ
「気に入っているところはいろいろあるのですが、I-PACEの場合クルマにSIMカードを入れることができるので、クルマ自体がWi-Fiスポットのような役割を果たせるんです。なので、車内で快適にゲームができると子どもたちは喜んでいますね。あと、まだ周囲にEVに乗っている方がいないので、EVを買ったと言うと『充電が面倒くさいでしょう』なんて言われますけど、私の場合そうは思わないですね。たしかにガソリンの場合チャージは数分ですけど。特に不便さは感じません。ただ、自宅に普通充電の充電器があれば便利だろうなとは思いますし、一番よいと思います」
都市部で、しかも集合住宅の場合は充電器を設けるのが条件的にむずかしい場合も多い現在だが、田中さんは『そんな条件の中でもEVとうまく付き合える方法を模索することが必要な時期でしょうね』と語る。さらには『そのうちインフラが追いついてくるかもしれませんが、まだそれは先の話であり今がボトムだと思って生活しています』と、EV社会到来前のアーリーアダプターとしてEVを取り巻く環境や、なによりI-PACEに乗ることを楽しんでいる。
「イヴォークと比べて、I-PACEの便利さはやはり回生ブレーキでしょうね。今は回生ブレーキを『強』にして走る練習中です。はじめは回生ブレーキが効いている間はブレーキランプがつかないと思っていたので、後続車に対してちょっとドキドキしていたこともありましたが、慣れると本当にラクですね。サウンドアクティブデザインなどは、まだほとんどいじってなくてノーマルです。いろいろ機能があるようですが、正直まだ手探り状態なのでこれからです。最近は電費をちょっと気にするようになりました」
I-PACEは回生ブレーキの効き具合、擬似エンジンサウンドを楽しめるサウンドアクティブデザインなど、オーナーの好みに応じてクルマの味付けをパネル操作ひとつで気軽に変更できる。クルマのソフトウェアもアップデートしていくので、購入してからもI-PACEの進化が楽しめるのだ。
EV専用設計のI-PACEは新感覚のクルマ
ライバル登場後もアドバンテージが高い
「新車情報は常に仕入れているのですが、I-PACEのおかげで断然EVが気になっていますね。各社、どのようにクルマや充電スポットなどのインフラを整えていくのか、大変興味があります。たとえば今、インフラについてはテスラ社が一番力を入れているように見えるんです。六本木や東雲などに急速充電器を、自社で設置しています。ぜひジャガーさんにもがんばっていただきたいですね」
「今後EVの購入をお考えの方で、SUVがお好みであれば、I-PACEは本当におすすめです。メルセデスベンツもEQCを出してきましたが、シャシーやボディは既存のGLCを流用しています。しかしI-PACEは完全にEV専用設計で開発され、それまでのガソリン車とは違う新時代のクルマなんです。僕の好みではありますが、デザインも今までのクルマとは違っていて断然いいと思います」
「そうそう、イヴォークに乗っていた頃はよくスキーに行っていたんです。万座のあたりに行くと、結構な降雪量なのですが、イヴォークは雪がかなり積もっていても全然問題なく行けました。電気自動車は雪に強いという話をよく耳にするので、今シーズン以降スキーに行くのが楽しみです」
前後にモーターを積み床下にバッテリーを積むことで、車両の重量バランスに優れ、しかも全輪駆動ということで、悪路や雪道の走破性にも優れるI-PACE。一面銀世界の雪山でスキー板を積んだフォトンレッドのI-PACEを見かけたら、それは田中さんのクルマかもしれない。クリニックとの往復、奥様の日常や旅行などの相棒にI-PACEを選んだ田中さん。アイボリーのインテリアに包まれドライブする様子は、まさにEVライフを先駆けるイノベーターそのものであった。